かもふ

こんな場所に書いていいのかわかりませんが気持ちの整理のために、彼の個人的な事には極力触れずに書くことにします

彼は精神面の病があって時々、俺やご両親も含めて他人と殆ど話せなくなることがありました
俺と付き合うようになった最初の一年の間にもだいたい３～４ヶ月に一度くらいの周期で
最初の数回は何かあったかもしれない、嫌われたかもしれない、そんな思いで一杯でした
付き合いがある程度長くなって病気の事もある程度理解して彼の症状が悪化して連絡が取れなくなっても俺から関係を切ることは絶対にしないと約束して話せなくなる時期をお互いやり過ごすようにしていました

今年の６月に入ったあたりから症状が酷くなってこれまでなら数週間で戻れるはずだったのがずっと続いて、心配で７月あたりから彼の自宅に行くようになりました
最初は顔を合わせるのがやっとの状態で無理させたくなくて無事だけ確かめてすぐに帰ったけど会いに行くたびに少しずつ良くなっていって前回、４度目に会いに行ったときは一緒に出掛けることができるくらいになって本人ももうすぐ普通に戻れると思っていたようでした

けど一週間くらい前から携帯の電源が入っていない状態が続いていて、今回また自宅に行くと彼のお母さんが迎えてくれて、彼が亡くなったことを伝えてくれました
本当は亡くなった時に彼のスマホからでも連絡したかったそうですがスマホの使い方がわからなくて俺が自分から訪ねてくるのを待っていたそうです
彼の部屋に通してくれてスカイプを通して何度も見ていた彼の部屋に遺影と遺灰が置かれているのを見て現実の事だと突き付けられました


死因は全く不明だったそうです
出かけたっきり戻らず発見されて病院に運ばれて死亡が確認されたそうです
自殺、他殺を思わせるような外傷も苦しんだような跡もなく、調べても何もわからないままだったそうです
ずっと前から精神的な不調はあっても身体の方は何も問題なかったとお母さんは言っていました

原因不明、突然の死、しかし俺には心当たりがありました
俺と同じ薬、女性ホルモン剤
彼は俺よりもずっと長く、俺と出会う前から使い続けていました
血栓、様々な臓器への負担、突然亡くなる原因になるリスクのある薬
そんな薬を使っていることをご両親が知っていれば何か死因が特定できたかもしれない

結局、事実を伝えることはできませんでした
彼がずっと秘密にしてきたことを言っていいのか、原因もわからずに息子を失ったご両親に確証はなくても心当たりとして伝えるべきか、その場で決めることはできませんでした

ご両親といろいろ話をしました
俺が知らない彼の生い立ち、俺の思い出、亡くなった時の様子
自分の息子に同性の恋人がいたなんて知る由もない
ご両親にとって俺はネットで知り合った遠くの友達くらいの認識です
それでも病気が原因で親しい人がいなくて葬儀に呼べる友人もいなかった彼と親しくしていたこと、
彼の病気や事情を知っても最後まで関係を捨てずにいたこと、
心配して何度も来てくれたこと、
俺と会って楽しそうにしていた彼、
最後に悲しんでくれたこと、
ご両親はすごく嬉しく思ってくれていたそうです

最後に、処分に困る遺品を引き取ってほしいと頼まれました
他に親しい人がいない事、服や靴は背格好が近いから使えるだろうし趣味で集めていた模型や工具、玩具類は自分たちが持っていても価値がわからないしいずれ処分してしまうなら同じ趣味を持っていて価値がわかる人が持っていてくれた方がいい、そう思ってくれたみたいです
落ち着いて整理が付いたら送るけど、とりあえず手で持てるだけでもと言って紙袋にいくつか入れて渡してくれました

正直、いまは受け取ってきたものを見るのも辛いです
彼との思い出、
彼ともう会うことができない苦しさ、
置いていかないでほしいと思った、
彼の友達として信じてくれたご両親に本当のことを伝えられないうしろめたさ、
彼が秘密いしてきたことを勝手に伝えて良いのか、
同じ薬を使っていて何時かこうなるかもしれない、彼が先にそうなってしまった
それも思っていたよりずっと早く
やり場のない思いでいっぱいです

それでも彼の恋人でいられた一年半、遠距離で会って過ごせたのは本当に短かったかもしれない、でも俺の２６年の人生で一番幸せな時間でした
もう他のだれかと付き合うことは一生ないです
俺が本当に愛する事が出来た、性別の問題さえ受け入れてくれて愛してくれた唯一の人でいてほしい
もう会うこともできなくてもずっと愛し続けたい
いつか俺も彼と同じような最期が待っているかもしれない
もうすぐかもしれないしずっと先かもしれない
でもそれまでの間、ずっと彼の事を思い続けていくことにします